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お知らせ詳細

モーツァルトの断片に何を読む

楽譜スタッフ キータムラ

草津A・SQUARE店/ミュージックサロンA・SQUARE

  • モーツァルトの断片に何を読む(その1)
  • モーツァルトの断片に何を読む(その2)
今回紹介する「フラグメント」とは曲名ではありません。この言葉は“断片”や“未完の”という意味で、モーツァルトは数多くの作品を“完成させて”後世に残した一方、何らかの理由で作曲を中断、あるいは放置されたものが少なからず存在します。その中でも有名なのが、映画「アマデウス」で取上げられたレクイエムですが、これはモーツァルトの死によって未完に終わったので、今回紹介するフラグメント作品とは少し意味合いが違います。
 例えば、1789年の春、モーツァルトはある人物から作品の依頼を受けます。その内容は「私の娘のためにやさしく弾けるピアノソナタを6曲作ってほしい」というものでした。もしかしたら、この依頼人は前の年モーツァルトが作曲した、ソナチネアルバムにも載っているハ長調K.545のソナタを知っていて依頼したのかも知れません。     
モーツァルトはこの依頼に応えようと作曲したのか、数小節で中断しているものが何曲か残っています。それらはどれも初見で弾ける簡単なものばかりですが、結局モーツァルトは“やさしい”ソナタを1曲も完成させることは出来ませんでした。
 しかし、その後モーツァルトは自身最後となるピアノソナタを1曲書き上げています。それがニ長調K.576のソナタです。この曲は依頼の“やさしい曲”への反動なのか、モーツァルトのピアノ作品の中でももっとも難しい曲となっています。
 モーツァルトのピアノソナタ第6番ニ長調K.284の第1楽章は現行のものが完成する前に展開部の途中、あと少しで再現部に入れる所で中断されたものが存在しています。それは冒頭の1小節目と第2主題はほぼ同じなのですが、第1主題の大半と結尾部、展開部がまったくの別物で、提示部の最後、現行版がフォルテで終わっているのに対し、中断されたものはピアノでやさしい感じで終わっています。展開部も16分音符の音型が中心なのは似ているのですが、両手が交差する現行版ほど込み入っていません。                                                 CDも楽譜も、今まで紹介した中で一番入手が難しいかも知れません。CDはデュオ・クロムランクが演奏したフラグメント集というタイトルのCDが以前出ていました。